GeoDjango チュートリアル

はじめに

GeoDjangoは、Django用の標準のcontribモジュールであり、それを世界クラスの地理情報Webフレームワークに変えます。GeoDjangoは、位置情報サービスなどの地理情報Webアプリケーションを作成するのを可能な限り簡単にすることを目指しています。その特徴は次のとおりです:

  • OGC ジオメトリとラスターデータ用のDjangoモデルフィールド。
  • 空間データのクエリと操作のための Django の ORM の拡張機能。
  • GISジオメトリとラスタの操作、およびさまざまな形式のデータ操作のための、疎結合の高レベルPythonインターフェース。
  • admin アプリケーションからジオメトリフィールドを編集する

このチュートリアルは Django に慣れていることを前提にしています。従って、 Django が初めての方は、まず 通常のチュートリアル を読んで Django に慣れてください。

注釈

GeoDjangoには、Django の要件以上の追加要件があります。詳細は インストールのドキュメント を参照してください。

このチュートリアルでは、地理情報を表示するためのウェブアプリケーションの作成方法を説明します。このチュートリアルでは、world borders [1] を表示します。このチュートリアルで使用されるコードの一部は、GeoDjango basic apps プロジェクトから取得されたか、その影響を受けています。 [2]

注釈

チュートリアルの各セクションを順を追って進んでください。

セットアップ

空間データベースを作成する

通常、特別な設定は必要ないので、他のプロジェクトと同じようにデータベースを作成できます。選択したデータベースについて、いくつかのヒントを提供します:

新しいプロジェクトを作成する

標準の django-admin スクリプトを使って、 geodjango というプロジェクトを作成します:

$ django-admin startproject geodjango
...\> django-admin startproject geodjango

これで新しいプロジェクトが初期化されます。ここで、 geodjango プロジェクトの中に world Django アプリケーションを作成します:

$ cd geodjango
$ python manage.py startapp world
...\> cd geodjango
...\> py manage.py startapp world

settings.py の設定

geodjango プロジェクトの設定は geodjango/settings.py ファイルに保存されています。データベース接続設定を編集して、自分の環境に合わせてください:

DATABASES = {
    "default": {
        "ENGINE": "django.contrib.gis.db.backends.postgis",
        "NAME": "geodjango",
        "USER": "geo",
    },
}

さらに、 INSTALLED_APPS 設定を変更して、 django.contrib.admin, django.contrib.gis, world (新しく作成したアプリケーション) を含めるようにします:

INSTALLED_APPS = [
    "django.contrib.admin",
    "django.contrib.auth",
    "django.contrib.contenttypes",
    "django.contrib.sessions",
    "django.contrib.messages",
    "django.contrib.staticfiles",
    "django.contrib.gis",
    "world",
]

地理データ

世界の国境

世界の国境データはこの zip file にあります。アプリケーション worlddata ディレクトリを作成し、国境データをダウンロードして解凍してください。GNU/Linuxプラットフォームでは、以下のコマンドを使用します:

$ mkdir world/data
$ cd world/data
$ wget https://web.archive.org/web/20231220150759/https://thematicmapping.org/downloads/TM_WORLD_BORDERS-0.3.zip
$ unzip TM_WORLD_BORDERS-0.3.zip
$ cd ../..
...\> mkdir world\data
...\> cd world\data
...\> wget https://web.archive.org/web/20231220150759/https://thematicmapping.org/downloads/TM_WORLD_BORDERS-0.3.zip
...\> unzip TM_WORLD_BORDERS-0.3.zip
...\> cd ..\..

このZIPファイルには、最も一般的な地理空間データ形式の1つである ESRI Shapefile として知られているデータファイルが含まれています。解凍すると、world borders データセットには以下の拡張子のファイルが含まれます:

  • .shp: 世界の国境のジオメトリのベクトルデータを保持します。
  • .shx: .shp に保存されているジオメトリのための空間インデックスファイル。
  • .dbf: 整数や文字列フィールドなどの非ジオメトリ属性データを保持するデータベースファイル。
  • .prj: シェープファイルに格納されている地理データの空間参照情報が含まれています。

ogrinfo を使って空間データを調べる

GDAL の ogrinfo ユーティリティを使うと、シェープファイルやその他のベクトルデータソースのメタデータを調べることができます:

$ ogrinfo world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp
INFO: Open of `world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp'
      using driver `ESRI Shapefile' successful.
1: TM_WORLD_BORDERS-0.3 (Polygon)
...\> ogrinfo world\data\TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp
INFO: Open of `world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp'
      using driver `ESRI Shapefile' successful.
1: TM_WORLD_BORDERS-0.3 (Polygon)

ogrinfo によると、シェープファイルには1つのレイヤーがあり、そのレイヤーにはポリゴンデータが含まれています。詳細を知るために、レイヤー名を指定して -so オプションを使用して重要なサマリ情報のみを取得します:

$ ogrinfo -so world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp TM_WORLD_BORDERS-0.3
INFO: Open of `world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp'
      using driver `ESRI Shapefile' successful.

Layer name: TM_WORLD_BORDERS-0.3
Geometry: Polygon
Feature Count: 246
Extent: (-180.000000, -90.000000) - (180.000000, 83.623596)
Layer SRS WKT:
GEOGCS["GCS_WGS_1984",
    DATUM["WGS_1984",
        SPHEROID["WGS_1984",6378137.0,298.257223563]],
    PRIMEM["Greenwich",0.0],
    UNIT["Degree",0.0174532925199433]]
FIPS: String (2.0)
ISO2: String (2.0)
ISO3: String (3.0)
UN: Integer (3.0)
NAME: String (50.0)
AREA: Integer (7.0)
POP2005: Integer (10.0)
REGION: Integer (3.0)
SUBREGION: Integer (3.0)
LON: Real (8.3)
LAT: Real (7.3)
...\> ogrinfo -so world\data\TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp TM_WORLD_BORDERS-0.3
INFO: Open of `world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp'
      using driver `ESRI Shapefile' successful.

Layer name: TM_WORLD_BORDERS-0.3
Geometry: Polygon
Feature Count: 246
Extent: (-180.000000, -90.000000) - (180.000000, 83.623596)
Layer SRS WKT:
GEOGCS["GCS_WGS_1984",
    DATUM["WGS_1984",
        SPHEROID["WGS_1984",6378137.0,298.257223563]],
    PRIMEM["Greenwich",0.0],
    UNIT["Degree",0.0174532925199433]]
FIPS: String (2.0)
ISO2: String (2.0)
ISO3: String (3.0)
UN: Integer (3.0)
NAME: String (50.0)
AREA: Integer (7.0)
POP2005: Integer (10.0)
REGION: Integer (3.0)
SUBREGION: Integer (3.0)
LON: Real (8.3)
LAT: Real (7.3)

この詳細なサマリー情報には、レイヤー内のフィーチャ数 (246)、データの地理的範囲、空間参照システム ("SRS WKT")、および各属性フィールドの型情報が記載されています。たとえば、FIPS: String (2.0) は、 FIPS 文字列フィールドの最大長が2であることを示しています。同様に、 LON: Real (8.3) は、最大8桁までの浮動小数点フィールドで、小数点以下3桁までの数字を保持します。

地理情報モデル

地理情報モデルを定義する

さて、 ogrinfo を使ってデータセットを調べたので、このデータを表す GeoDjango モデルを作成しましょう:

from django.contrib.gis.db import models


class WorldBorder(models.Model):
    # Regular Django fields corresponding to the attributes in the
    # world borders shapefile.
    name = models.CharField(max_length=50)
    area = models.IntegerField()
    pop2005 = models.IntegerField("Population 2005")
    fips = models.CharField("FIPS Code", max_length=2, null=True)
    iso2 = models.CharField("2 Digit ISO", max_length=2)
    iso3 = models.CharField("3 Digit ISO", max_length=3)
    un = models.IntegerField("United Nations Code")
    region = models.IntegerField("Region Code")
    subregion = models.IntegerField("Sub-Region Code")
    lon = models.FloatField()
    lat = models.FloatField()

    # GeoDjango-specific: a geometry field (MultiPolygonField)
    mpoly = models.MultiPolygonField()

    # Returns the string representation of the model.
    def __str__(self):
        return self.name

models モジュールが django.contrib.gis.db からインポートされていることに注意してください。

ジオメトリフィールドのデフォルトの空間参照系は WGS84 です (SRID は 4326 を意味します) 。つまり、フィールドの座標は度単位の経度、緯度のペアです。別の座標系を使用するには、srid 引数を使用してジオメトリフィールドの SRID を設定します。座標系の EPSG コードを表す整数を使用します。

migrate を実行します。

モデルを定義した後、データベースと同期する必要があります。まず、データベースマイグレーションを作成してください:

$ python manage.py makemigrations
Migrations for 'world':
  world/migrations/0001_initial.py:
    - Create model WorldBorder
...\> py manage.py makemigrations
Migrations for 'world':
  world/migrations/0001_initial.py:
    - Create model WorldBorder

WorldBorder モデルのテーブルを生成するSQLを見てみましょう:

$ python manage.py sqlmigrate world 0001
...\> py manage.py sqlmigrate world 0001

このコマンドを実行すると、次の出力が生成されるはずです:

BEGIN;
--
-- Create model WorldBorder
--
CREATE TABLE "world_worldborder" (
    "id" bigint NOT NULL PRIMARY KEY GENERATED BY DEFAULT AS IDENTITY,
    "name" varchar(50) NOT NULL,
    "area" integer NOT NULL,
    "pop2005" integer NOT NULL,
    "fips" varchar(2) NOT NULL,
    "iso2" varchar(2) NOT NULL,
    "iso3" varchar(3) NOT NULL,
    "un" integer NOT NULL,
    "region" integer NOT NULL,
    "subregion" integer NOT NULL,
    "lon" double precision NOT NULL,
    "lat" double precision NOT NULL
    "mpoly" geometry(MULTIPOLYGON,4326) NOT NULL
)
;
CREATE INDEX "world_worldborder_mpoly_id" ON "world_worldborder" USING GIST ("mpoly");
COMMIT;

これが正しければ、 migrate を実行して、このテーブルをデータベースに作成してください。

$ python manage.py migrate
Operations to perform:
  Apply all migrations: admin, auth, contenttypes, sessions, world
Running migrations:
  ...
  Applying world.0001_initial... OK
...\> py manage.py migrate
Operations to perform:
  Apply all migrations: admin, auth, contenttypes, sessions, world
Running migrations:
  ...
  Applying world.0001_initial... OK

空間データをインポートする

このセクションでは、 LayerMapping データインポートユーティリティ を使用して、GeoDjangoモデルを介して世界の国境のシェープファイルをデータベースにインポートする方法を紹介します。

空間データベースにデータをインポートする方法は色々あります。GeoDjango に含まれるツール以外にも、以下のような方法があります:

  • ogr2ogr は、GDAL に含まれるコマンドラインユーティリティであり、多くのベクトルデータ形式を PostGIS、MySQL、および Oracle データベースにインポートできます。
  • shp2pgsql: このユーティリティはPostGISに含まれ、ESRI shapefileをPostGISにインポートします。

GDAL インターフェース

先ほど、 ogrinfo を使って世界の国境のシェープファイルの中身を調べましたね。GeoDjango には、GDAL の強力な OGR ライブラリへの Pythonic インタフェースも含まれており、 OGR がサポートしている全てのベクトルデータソースを扱うことができます。

まず、Django シェルを起動します:

$ python manage.py shell
...\> py manage.py shell

チュートリアルの最初の方で 世界の国境 データをダウンロードしている場合は、Pythonの pathlib.Path を使用してそのパスを指定できます:

>>> from pathlib import Path
>>> import world
>>> world_shp = Path(world.__file__).resolve().parent / "data" / "TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp"

ここで、GeoDjango の DataSource インタフェースを使って、 world borders shapefile を開いてください:

>>> from django.contrib.gis.gdal import DataSource
>>> ds = DataSource(world_shp)
>>> print(ds)
/ ... /geodjango/world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp (ESRI Shapefile)

データソースオブジェクトは異なるレイヤーの地理空間フィーチャを持つことができます。しかし、シェープファイルは 1 つのレイヤーしか持つことができません:

>>> print(len(ds))
1
>>> lyr = ds[0]
>>> print(lyr)
TM_WORLD_BORDERS-0.3

レイヤーのジオメトリタイプと、含まれているフィーチャの数を確認できます:

>>> print(lyr.geom_type)
Polygon
>>> print(len(lyr))
246

注釈

残念ながら、シェープファイルのデータ形式では、ジオメトリのタイプをより細かく指定することはできません。このシェープファイルは、他の多くのファイル同様、ポリゴンではなく、 MultiPolygon ジオメトリを含んでいます。GeoDjango の MultiPolygonFieldPolygon 型のジオメトリを受け付けますが、 PolygonFieldMultiPolygon 型のジオメトリを受け付けません。これが、上で定義した WorldBorder モデルが MultiPolygonField を使用している理由です。

Layer には関連付けられた空間参照システムも存在する場合があります。もしそうであれば、srs 属性は SpatialReference オブジェクトを返します。

>>> srs = lyr.srs
>>> print(srs)
GEOGCS["WGS 84",
DATUM["WGS_1984",
    SPHEROID["WGS 84",6378137,298.257223563,
        AUTHORITY["EPSG","7030"]],
    AUTHORITY["EPSG","6326"]],
PRIMEM["Greenwich",0,
    AUTHORITY["EPSG","8901"]],
UNIT["degree",0.0174532925199433,
    AUTHORITY["EPSG","9122"]],
AXIS["Latitude",NORTH],
AXIS["Longitude",EAST],
AUTHORITY["EPSG","4326"]]
>>> srs.proj  # PROJ representation
'+proj=longlat +datum=WGS84 +no_defs'

このシェープファイルは一般的なWGS84空間参照システム、つまりデータは度の単位で経度緯度の組を使用しています。

さらに、シェープファイルは追加データを含む属性フィールドもサポートしています。以下はWorld Bordersレイヤーのフィールドです:

>>> print(lyr.fields)
['FIPS', 'ISO2', 'ISO3', 'UN', 'NAME', 'AREA', 'POP2005', 'REGION', 'SUBREGION', 'LON', 'LAT']

以下のコードで、各フィールドに関連するOGRタイプ (整数や文字列など) を調べることができます:

>>> [fld.__name__ for fld in lyr.field_types]
['OFTString', 'OFTString', 'OFTString', 'OFTInteger', 'OFTString', 'OFTInteger', 'OFTInteger64', 'OFTInteger', 'OFTInteger', 'OFTReal', 'OFTReal']

レイヤー内の各フィーチャをイテレートし、フィーチャのジオメトリ (geom 属性でアクセス) とフィーチャの属性フィールド (get() メソッドで にアクセス) の両方から情報を抽出できます:

>>> for feat in lyr:
...     print(feat.get("NAME"), feat.geom.num_points)
...
Guernsey 18
Jersey 26
South Georgia South Sandwich Islands 338
Taiwan 363

Layer オブジェクトはスライス可能です。

>>> lyr[0:2]
[<django.contrib.gis.gdal.feature.Feature object at 0x2f47690>, <django.contrib.gis.gdal.feature.Feature object at 0x2f47650>]

また、個々のフィーチャは、フィーチャ ID で検索できます:

>>> feat = lyr[234]
>>> print(feat.get("NAME"))
San Marino

国境ジオメトリは、WKT および GeoJSON としてエクスポートできます:

>>> geom = feat.geom
>>> print(geom.wkt)
POLYGON ((12.415798 43.957954,12.450554 ...
>>> print(geom.json)
{ "type": "Polygon", "coordinates": [ [ [ 12.415798, 43.957954 ], [ 12.450554, 43.979721 ], ...

LayerMapping

データをインポートするには、Pythonスクリプト内で LayerMapping を使用します。次のコードを含む world アプリケーション内に load.py というファイルを作成してください:

from pathlib import Path
from django.contrib.gis.utils import LayerMapping
from .models import WorldBorder

world_mapping = {
    "fips": "FIPS",
    "iso2": "ISO2",
    "iso3": "ISO3",
    "un": "UN",
    "name": "NAME",
    "area": "AREA",
    "pop2005": "POP2005",
    "region": "REGION",
    "subregion": "SUBREGION",
    "lon": "LON",
    "lat": "LAT",
    "mpoly": "MULTIPOLYGON",
}

world_shp = Path(__file__).resolve().parent / "data" / "TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp"


def run(verbose=True):
    lm = LayerMapping(WorldBorder, world_shp, world_mapping, transform=False)
    lm.save(strict=True, verbose=verbose)

何が起こっているかについての、ちょっとしたノート:

  • world_mapping 辞書の各キーは WorldBorder モデル内のフィールドに対応します。値はデータが読み込まれる shapefile フィールドの名前です。
  • ジオメトリフィールドのキー mpolyMULTIPOLYGON で、 GeoDjango がこのフィールドをインポートするジオメトリタイプです。シェープファイル内の単純なポリゴンも、データベースに挿入する前に自動的にコレクションに変換されます。
  • シェープファイルへのパスは絶対パスではないことに注意してください。つまり、 world アプリケーション ( data サブディレクトリを含む) を別の場所に移動しても、スクリプトは動作します。
  • transform キーワードは False に設定されています。なぜなら、shapefile のデータは変換する必要がないためです。これはすでに WGS84 (SRID=4326) であるからです。

その後、geodjango プロジェクトディレクトリから Django シェルを呼び出してください。

$ python manage.py shell
...\> py manage.py shell

次に、load モジュールをインポートし、 run ルーチンを呼び出して、 LayerMapping が作業を行う様子を見てください:

>>> from world import load
>>> load.run()

ogrinspect を試す

LayerMapping データインポートユーティリティ で地理情報モデルを定義し、データをインポートする方法を説明しましたが、 ogrinspect 管理コマンドを使用することで、このプロセスをさらに自動化できます。 ogrinspect コマンドは GDAL がサポートするベクトルデータソース (例えばシェープファイル) をイントロスペクトし、モデル定義と LayerMapping 辞書を自動的に生成します。

コマンドの一般的な使用法は以下の通りです:

$ python manage.py ogrinspect [options] <data_source> <model_name> [options]
...\> py manage.py ogrinspect [options] <data_source> <model_name> [options]

data_source は GDAL がサポートするデータソースへのパスであり、 model_name はモデルに使用する名前である。コマンドラインオプションを使用すると、モデルの生成方法をさらに定義できます。

たとえば、以下のコマンドを実行すると、ほぼ先ほど作成した WorldBorder モデルとマッピング辞書を自動的に再現します。

$ python manage.py ogrinspect world/data/TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp WorldBorder \
    --srid=4326 --mapping --multi
...\> py manage.py ogrinspect world\data\TM_WORLD_BORDERS-0.3.shp WorldBorder \
    --srid=4326 --mapping --multi

上記のコマンドラインオプションに関していくつかの注意点があります:

  • --srid=4326 オプションは、地理フィールドのSRIDを設定します。
  • --mapping オプションは、ogrinspect に、 LayerMapping と一緒に使用するマッピング辞書を生成するよう指示します。
  • オプション --multi を指定すると、地理フィールドが単なる PolygonField ではなく MultiPolygonField になります。

このコマンドは次のような出力をします。GeoDjango アプリケーションの models.py に直接コピーできます:

# This is an auto-generated Django model module created by ogrinspect.
from django.contrib.gis.db import models


class WorldBorder(models.Model):
    fips = models.CharField(max_length=2)
    iso2 = models.CharField(max_length=2)
    iso3 = models.CharField(max_length=3)
    un = models.IntegerField()
    name = models.CharField(max_length=50)
    area = models.IntegerField()
    pop2005 = models.IntegerField()
    region = models.IntegerField()
    subregion = models.IntegerField()
    lon = models.FloatField()
    lat = models.FloatField()
    geom = models.MultiPolygonField(srid=4326)


# Auto-generated `LayerMapping` dictionary for WorldBorder model
worldborders_mapping = {
    "fips": "FIPS",
    "iso2": "ISO2",
    "iso3": "ISO3",
    "un": "UN",
    "name": "NAME",
    "area": "AREA",
    "pop2005": "POP2005",
    "region": "REGION",
    "subregion": "SUBREGION",
    "lon": "LON",
    "lat": "LAT",
    "geom": "MULTIPOLYGON",
}

空間クエリ

空間のルックアップ (Spatial Lookup)

GeoDjango は Django の ORM に空間ルックアップを追加します。たとえば、特定の地点を含む WorldBorder テーブルの国を見つけることができます。まず、管理シェルを起動してください:

$ python manage.py shell
...\> py manage.py shell

ここで、注目するポイント [3] を定義します:

>>> pnt_wkt = "POINT(-95.3385 29.7245)"

pnt_wkt 文字列は、経度 -95.3385 度、緯度 29.7245 度にある点を表します。この幾何情報は Well Known Text (WKT) として知られる形式で表されており、これは Open Geospatial Consortium (OGC) によって発行された標準です。 [4] WorldBorder モデルをインポートし、pnt_wkt をパラメータとして使用して contains ルックアップを実行します:

>>> from world.models import WorldBorder
>>> WorldBorder.objects.filter(mpoly__contains=pnt_wkt)
<QuerySet [<WorldBorder: United States>]>

ここでは、米国の国境という1つのモデルのみを持つ QuerySet を取得しました (まさに期待通りです)。

同様に、 GEOS ジオメトリオブジェクト を使用することもできます。ここでは、 intersects 空間ルックアップと get メソッドを組み合わせて、クエリセットの代わりにサンマリノの WorldBorder インスタンスのみを取得できます:

>>> from django.contrib.gis.geos import Point
>>> pnt = Point(12.4604, 43.9420)
>>> WorldBorder.objects.get(mpoly__intersects=pnt)
<WorldBorder: San Marino>

containsintersects のルックアップは利用可能なクエリの一部です。 GeoDjango データベース API のドキュメントにはさらに多くの内容があります。

座標系の自動変換

空間クエリを実行する際、GeoDjango は、異なる座標系のジオメトリを自動的に変換します。次の例では、座標は EPSG SRID 32140 、テキサス州南部に固有の座標系であり、単位は ではなく メートル で表されます。

>>> from django.contrib.gis.geos import GEOSGeometry, Point
>>> pnt = Point(954158.1, 4215137.1, srid=32140)

pnt は、SRIDを含むWKTの拡張形式であるEWKTで構築することもできることに注意してください。

>>> pnt = GEOSGeometry("SRID=32140;POINT(954158.1 4215137.1)")

GeoDjango の ORM は、ジオメトリの値を自動的に変換 SQL でラップし、開発者がより高い抽象度で作業できるようにします:

>>> qs = WorldBorder.objects.filter(mpoly__intersects=pnt)
>>> print(qs.query)  # Generating the SQL
SELECT "world_worldborder"."id", "world_worldborder"."name", "world_worldborder"."area",
"world_worldborder"."pop2005", "world_worldborder"."fips", "world_worldborder"."iso2",
"world_worldborder"."iso3", "world_worldborder"."un", "world_worldborder"."region",
"world_worldborder"."subregion", "world_worldborder"."lon", "world_worldborder"."lat",
"world_worldborder"."mpoly" FROM "world_worldborder"
WHERE ST_Intersects("world_worldborder"."mpoly", ST_Transform(%s, 4326))
>>> qs  # printing evaluates the queryset
<QuerySet [<WorldBorder: United States>]>

素のクエリ

素のクエリ を使用する際は、ジオメトリフィールドをラップして、そのフィールド値が GEOS に認識されるようにする必要があります。

>>> from django.db import connection
>>> # or if you're querying a non-default database:
>>> from django.db import connections
>>> connection = connections["your_gis_db_alias"]
>>> City.objects.raw(
...     "SELECT id, name, %s as point from myapp_city" % (connection.ops.select % "point")
... )

素のクエリを使うのは、自分が何をしているのかよく分かっている場合に限定されるべきです。

ジオメトリの遅延評価

GeoDjango はジオメトリを標準化されたテキスト表現で読み込みます。ジオメトリフィールドに最初にアクセスすると、 GeoDjango は GEOSGeometry オブジェクトを生成し、よく使われる地理空間フォーマット用のシリアライズプロパティなどの強力な機能を公開します:

>>> sm = WorldBorder.objects.get(name="San Marino")
>>> sm.mpoly
<MultiPolygon object at 0x24c6798>
>>> sm.mpoly.wkt  # WKT
MULTIPOLYGON (((12.4157980000000006 43.9579540000000009, 12.4505540000000003 43.9797209999999978, ...
>>> sm.mpoly.wkb  # WKB (as Python binary buffer)
<read-only buffer for 0x1fe2c70, size -1, offset 0 at 0x2564c40>
>>> sm.mpoly.geojson  # GeoJSON
'{ "type": "MultiPolygon", "coordinates": [ [ [ [ 12.415798, 43.957954 ], [ 12.450554, 43.979721 ], ...

これには、GEOSライブラリが提供するすべての高度な幾何演算へのアクセスが含まれます:

>>> pnt = Point(12.4604, 43.9420)
>>> sm.mpoly.contains(pnt)
True
>>> pnt.contains(sm.mpoly)
False

地理情報のアノテーション

GeoDjangoでは、距離などの地理情報アノテーションを計算するための一連の操作 (交差、差分など) を提供しています。詳細は、 地理情報データベース関数 ドキュメントを参照してください。

データを地図上に配置する

地理情報の Admin

Django の admin アプリケーション はジオメトリフィールドの編集をサポートしています。

基本

Django のadmin アプリケーションでは、ユーザが JavaScript のスリッピーマップ (OpenLayers を利用) 上でジオメトリを作成したり変更したりできます。

さあ、始めましょう。次のコードを含む world アプリケーション内に admin.py という名前のファイルを作成します:

from django.contrib.gis import admin
from .models import WorldBorder

admin.site.register(WorldBorder, admin.ModelAdmin)

次に、 geodjango アプリケーションフォルダにある urls.py を以下のように編集してください:

from django.contrib import admin
from django.urls import include, path

urlpatterns = [
    path("admin/", admin.site.urls),
]

admin ユーザーを作成します:

$ python manage.py createsuperuser
...\> py manage.py createsuperuser

次に、Django 開発サーバを起動します:

$ python manage.py runserver
...\> py manage.py runserver

最後に http://localhost:8000/admin/ にアクセスし、先ほど作成したユーザーでログインします。 WorldBorder のエントリーをブラウズし、ポリゴンをクリックして頂点を好きな位置までドラッグすることで、境界線を編集できます。

GISModelAdmin

GISModelAdmin を使用すると、GeoDjango は admin アプリケーションで OpenStreetMap レイヤーを使用します。これにより、 ModelAdmin が使用する Vector Map Level 0 WMSデータセット (OSGeo でホストされている) よりも、より多くのコンテキスト (通りや通路の詳細を含む) が提供されます。

PROJの座標変換ファイルがインストールされている必要があります (詳しくは PROJ installation instructions を参照してください) 。

この要件を満たしている場合は、 admin.py ファイルで GISModelAdmin オプションクラスを使用してください:

admin.site.register(WorldBorder, admin.GISModelAdmin)

脚注

[1]Special thanks to Bjørn Sandvik of mastermaps.net for providing and maintaining this dataset.
[2]GeoDjango の基本アプリは、Dane Springmeyer、Josh Livni、およびChristopher Schmidt によって記述されました。
[3]このポイントは ヒューストン大学法科大学院 です。
[4]Open Geospatial Consortium, Inc, OpenGIS Simple Feature Specification For SQL.
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